【意義】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)は、ライセンサーがサーバーにインストールしたソフトウェアをライセンシーがインターネットを経由して使用する場合に締結される契約です。
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)において、ライセンシーは、パソコン、スマートフォン等の端末を有し、インターネット環境下にあれば、いつでもアカウントID及びパスワードを入力した上でソフトウェアを使用できます。
また、ウェブブラウザを経由してソフトウェアを使用している限り、ライセンシーがソフトウェアのバージョンアップを自ら実施する必要はありません。
【ソフトウェア使用権の譲渡不可等】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)では、ライセンサーが他のライセンシーにもソフトウェアを使用させるため、ライセンシーに許諾されたソフトウェア使用権は、非独占的なものであり、かつ、ライセンシーは、第三者に対してその使用権を譲渡し、又は再許諾してはならないとされることが多いといえます。
【アカウントID及びパスワード】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)では、ライセンサーからライセンシーに対してアカウントIDが交付され、ライセンシーは、そのアカウントID及びパスワードを入力してソフトウェアを使用することになります。
この点について、実務では、ライセンシーは、自己の責任においてアカウントID及びパスワードを保管し、これらを第三者に譲渡し、又は貸与してはならないとされます。
その上でライセンサーが保有するライセンシーの登録情報とアカウントID及びパスワードの組み合わせが一致している場合、そのライセンシーがソフトウェアを使用したものとみなす形が多いといえます。
なお、ライセンシーが会社等の場合において、複数の従業員がソフトウェアを使用するというような場合には、管理者アカウントを1つのみ交付した上で、そこに紐付けられるような形で複数の従業員アカウントが交付される形も存在します。
【パスワードの不正利用】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)において、パスワードがライセンシー又は第三者により不正に利用された疑いがあるときは、ライセンサーは、パスワードを一方的にリセットできるとすることがあります。
【使用目的】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)では、ライセンシーが一定の使用目的の範囲内でソフトウェアを使用できるとされることが多く、実務では、「自己の業務遂行のために」等と規定されることがあります。
これは、上記のような規定がないとライセンシーが一般向けにソフトウェアの使用権を販売し、ライセンサーの売上に打撃を与える等の事態が生じるおそれがあり、このような事態を防止するためです。
【禁止行為】
ソフトウェアライセンス契約書(クラウド型)では、ソフトウェアのリバースエンジニアリング、ソフトウェアのサブライセンス、有害ウイルスの送信等ソフトウェアを使用するに際しライセンシーが行ってはならない事項が禁止行為として規定されます。
【監査】
ライセンシーがソフトウェアライセンス契約(クラウド型)に定めた条件に基づきソフトウェアを使用しているのかを確認するため、ライセンシーに対する事前通知を条件として、ライセンサーは、自ら又は第三者を通じてライセンシーのソフトウェアの使用状況を監査することができるとする場合があります。
なお、その監査費用については、原則、ライセンサーが負担するものの、監査において、ライセンシーがソフトウェアライセンス契約(クラウド型)に違反している事実が確認されたときは、ライセンシーがその監査費用を負担する形が多いといえます。
【アップデート】
ソフトウェアのアップデート版が提供された場合、ソフトウェアの旧版の提供が終了し、以後、ライセンシーは、旧版を使用することができないことがソフトウェアライセンス契約(クラウド型)に規定されることがあります。
これは、アップデート版の提供により、旧版と内容、使用方法等が変更され得るためです。
なお、これ以外にも、ライセンサーの負担を軽減するため、OSが変更された場合といえども、それに伴いライセンサーがソフトウェアのアップデート版を提供する義務を負わないことを規定することがあります。
【保証】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)において、ソフトウェアが所定の仕様どおりに稼働することをライセンサーが保証し、もし、その保証に反することになったときは、ライセンサーは、ソフトウェアの修補又は訂正しか行わないことが規定されることがあります。
その上でライセンサーは、ソフトウェアがライセンシーの特定の目的に適合することを保証しないことが規定される場合があります。
【サーバーメンテナンス】
ライセンシーが安定的にソフトウェアを使用できるようにするため、ライセンサーにおいてサーバーメンテナンスを定期的に実施する必要があります。
そこで、ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)において、サーバーメンテナンス時に一時的にライセンシーがソフトウェアを使用できなくなる場合があり、その場合であっても、ライセンサーは、ライセンシーに対して損害賠償責任を負わないことを規定することがあります。
【バックアップ等の責任】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)では、サーバーにデータが保存される関係で、インストール型のソフトウェアライセンス契約と異なりデータ消滅等のリスクは低いと考えられます。
ただ、データ消滅等が全くないとは言い切れないため、ライセンシーが自らの責任でデータのバックアップ、保管等を行い、万一、データが消滅する等の事態が生じても、ライセンサーは、何らの責任を負わないとされることがあります。
【環境整備】
ソフトウェアライセンス契約(クラウド型)では、ソフトウェアを使用するのに必要なインターネット回線、端末等の環境をライセンシーが自らの責任と費用負担で整備しなければならないとされることがほとんどといえます。
実務では、上記に加えて、ライセンシーが整備した環境とソフトウェアとの整合性について、ライセンサーは、何ら保証しないとされることがあります。