動産売買契約書の意義


【意義】

動産売買契約書とは、当事者間で機械等の動産を目的物として単発で売買契約を締結する場合に用いられる契約書をいい、継続的な売買が予定されている場合に用いられる継続的商品売買契約書とは、用途が異なることになります。

 

 


【目的物の仕様】

動産売買契約においては、その目的物が契約内容に適合しているか否かの判断基準を明らかにする観点から、目的物の仕様を具体的に特定することが重要とされます。

 

例えば、機械を目的物とする場合には、「メーカー名」、「型番」、「品名」等で特定する形になります。

 

ただ、倉庫等の一定の場所に存在する全ての動産をまとめて目的物の対象とするときは、個々の動産を特定せず所在場所を中心とした特定にとどめた上で現状有姿(=現品渡し)で引き渡すことが規定される場合があります。

 

 


【目的物の引渡日及び引渡場所】

動産売買契約書では、買主が「いつ」「どの場所」で売主から目的物の引渡しを受けられるのかを明らかにする観点から、目的物の引渡日及び引渡場所が規定されます。

 

この点、目的物の引渡日については、売主が前倒しで買主に目的物を引き渡すことが可能か否かという問題があり、期日前に引渡しが行われると買主の受入準備が間に合わないおそれあります。

 

そこで、期日前の引渡しを行うときは、買主の承諾を要するとすることがあります。

 

なお、売主から買主への引渡しの方法については、次のものがあり、「動産の引渡し」は、第三者に対する対抗要件となります。下記の(2)から(4)までの引渡しは、いずれも動産である目的物の占有を実際に移転させることなく、占有権譲渡の意思表示だけで占有権を譲渡しているため、その旨を動産売買契約書に規定することが重要となります。

 

(1)現実の引渡し

⇒売主から買主へ現実に動産である目的物を引き渡したときは、売主から買主に動産である目的物の引渡しがあったと取り扱われます。

 

(2)簡易の引渡し

⇒既に動産である目的物を買主が占有している場合に(ex.レンタル事業者から商品をレンタルしている場合に)、売主から買主へ占有権譲渡の意思表示をしたときは(ex.レンタル事業者から商品を買い取ったときは)、売主から買主に動産である目的物の引渡しがあったと取り扱われます。

 

(3)占有改定による引渡し

⇒売主が占有している動産である目的物を以後買主のために占有する旨を売主から買主へ意思表示したときは、売主から買主に動産である目的物の引渡しがあったと取り扱われます。

 

(4)指図による占有移転による引渡し

⇒倉庫業者等の第三者が動産である目的物を占有している場合において、売主がその第三者へ以後は買主のために占有することを指図し、買主がこれに承諾する旨の意思表示をしたときは、売主から買主に動産である目的物の引渡しがあったと取り扱われます。

 

 


【検査】

引き渡された目的物の種類、品質又は数量について、契約内容に適合しない点があるか否かを確認するため、検査条項が動産売買契約書に規定されることが多いといえます。

 

この点については、目的物の引渡しを受けてから一定期間内に、買主は、検査を実施し、その目的物の種類、品質又は数量について、契約内容に適合しない点があるときは、その期間内に売主へその旨を通知しなければならないとされます。

 

その上で売主は、買主からその通知を受けたときは、自らの費用負担でその目的物を引き取った上で代替物を納品すること等が規定されます。

 

 


【検査の省略】

売主が出荷前検査を行うことにより、買主による検査を省略する場合があり、この場合、買主が目的物を受領した時点で検査に合格したものとして取り扱うことになります。

 

 


【契約不適合責任】

買主の検査完了後に契約不適合が発見された場合には、検査完了後、一定期間内であれば、売主は、契約不適合責任を負うこととし、買主からの代替物の納品等の要求に売主が応じる旨の条項が動産売買契約書に規定されることが多いといえます。

 

これにより、例えば、実際に使用して判明した目的物の低質等検査の段階では発見できなかった契約不適合について、買主は、売主に対し、代替物の納品等を請求することができます。

 

ただし、中古品が目的物となっていて、買主が消費者ではなく事業者であるときは、売主は、買主へ現状有姿で目的物を引き渡せば足り、契約不適合責任を一切負わない旨が規定されることがあります。

 

 


【売主が契約不適合責任を負う期間】

民法及び商法に定める契約不適合責任に関する条文は、任意規定であることから、売主が契約不適合責任を負う期間については、原則、売主と買主との間で自由に取り決めることが可能です。

 

ここでは、その期間をどのように定めるべきかという問題があるところ、次の期間を考慮して定めることが考えられます。

 

(1)目的物の耐用期間

(2)検査では発見できない契約不適合を発見するために必要な期間

 

 


【代金支払いのパターン】

動産売買契約における代金支払いのパターンとしては、次のものが考えられます。

 

(1)一定の期日に代金を一括又は分割で支払う方法

(2)目的物の引渡しとき換えに代金を支払う方法

(3)目的物の引渡し前に代金の一部について、手付金を支払い、残金を目的物の引渡しと引き換えに支払う方法

 

 


【引渡費用】

目的物の引渡費用は、特約がなければ、売主の負担となります。ただ、その負担について無用な争いを防ぐため、念のため、その費用をどちらが負担するのかを動産売買契約書に規定することがあります。

 

 


【第三者の知的財産権侵害】

売主が買主へ引き渡した目的物が第三者の知的財産権を侵害していた場合、買主が第三者から目的物の使用差止の請求等を受ける可能性があります。

 

そこで、目的物が第三者の知的財産権を侵害しないことを売主が保証し、買主が第三者から知的財産権の侵害を理由に請求、警告等を受けたときは、買主は、売主へその旨を通知し、売主は、自らの責任と費用負担により買主を防御しなければならないとすることがあります。

 

その際、買主から売主へ防御に必要な権限が付与され、かつ、買主は、売主へ合理的な協力を行い、第三者との間で和解等をするときは、事前に売主の承諾を得なければならないとされることがあります。

 

なお、第三者からの請求、警告等により買主が目的物を使用できなくなるおそれがあるときは、売主は、買主に対し、次のいずれかの措置を講じることができるとすることがあります。

(1)権利侵害のない代替品との交換

(2)目的物のうち、権利侵害のおそれのあるとの交換

(3)買主による目的物の継続使用のための第三者からのライセンスの取得