【意義】
顧問契約書(退任役員用)は、中小企業の経営者等の役員が取締役を退任した後、その役員が顧問又は相談役といった肩書で退任した対象会社に対して会社運営について助言を与える等の顧問業務を行う場合に用いられる契約書です。
例えば、中小企業の経営者が株式を第三者に譲渡したものの、譲受人の希望によりその経営者が顧問としての立場で会社に関与することがあります。
その経営者は、現役時代に様々な経験及び知識を積み重ね、加えて、社内事情をよく理解しているため、現場の実情に沿った適切な助言を行うことが可能であることから、顧問契約(退任役員用)が活用され、通常、対象会社と経営者であった者との間で締結されます。
なお、顧問契約(退任役員用)は、顧問(受託者)が委託者に対して仕事の完成を約束するものではなく、善管注意義務をもって、顧問業務を処理する場合の契約であるため、類型としては、準委任契約であると考えられます。
【顧問業務(退任役員用)の詳細】
顧問契約(退任役員用)では、顧問(受託者)が債務を履行しているか否かの判断基準を明確にするため、顧問(受託者)が委託者に対して実施する顧問業務の内容、実施方法等の詳細を定めることが重要です。
例えば、「委託者の事業所等まで顧問(受託者)が直接に訪問して顧問業務を行うのか?電話相談又はメール相談に応じてもらえるのか? 電話相談又はメール相談には、回数制限があるか?1か月当たりの業務稼働可能時間は、何時間までか?」等が問題となります。
【委託者の事業所等へ訪問する場合】
顧問業務を実施するに際し、顧問(受託者)が委託者の事業所等へ訪問するする場合には、顧問(受託者)は、その事業所等で適用される施設規則に従わなければならないことが規定されることがあります。
【報酬の算定】
継続的な顧問契約(退任役員用)では、月額報酬制が採用されることが多いといえます。
【再委託の制限】
顧問契約(退任役員用)は、顧問(受託者)の知見、経歴、業務遂行能力等を信頼して締結されるという背景から、顧問(受託者)が第三者へ顧問業務を再委託することは、委託者の事前の承諾がない限り、禁止されることが多いといえます。
【任意解除】
顧問契約(退任役員用)は、信頼関係を基礎とする準委任契約であるため、互いに任意解除できる形にすることが多いといえます。
ただし、いきなり任意解除を行うと相手方に不測の損害を及ぼすおそれがあるため、やむを得ない事由がある場合を除き、一定の予告期間を設けた上で任意解除を認めることが重要といえます。