【軽微な債務不履行】
債務者の債務不履行が軽微な場合、民法上、債権者は、これを理由に契約を解除することはできないとされています。もっとも、債権者の中には、軽微な債務不履行であっても契約を解除したいと考えている場合があります。
そこで、民法の原則とは異なり、債務不履行があれば、その程度が軽微であっても、債権者が契約を解除できるといった条項を定めることが可能かという問題が出てきます。
【解除権の行使の可否】
この点については、大きく議論されている分野ではないため、この問題に言及している文献の数は、少ないといえますが、現状把握できている限りにおいては、実務上、次のような見解があります。
(1)軽微な債務不履行があっても特約により解除権の行使を認めるという見解
⇒ 特に理由は、明らかにされていません。
(2)軽微な債務不履行については、特約によっても解除権の行使を認めることはできないという見解
⇒民法において、債務不履行の程度が軽微なものについて、債権者による解除権の行使が制限される理由は、その行使を認めると信義則に反する点にあるから、軽微な債務不履行については、特約によっても解除権の行使を認めることはできないとされます(=特約により信義則に反する事態を招くことはできない。)。
【対応方法】
対応方法として、無難な方法を採用するのであれば、原則、上記(2)の見解を採用しつつも、どうしても上記(1)の見解を採用する場合には、その効力が認められない可能性があることを承知の上で、上記(1)の見解を採用する形になると思われます。